どうも不動産職人です。
「税制改正」――この四文字を見た瞬間に、そっとページを閉じたくなる。
そのお気持ち、痛いほどわかります。
制度の話はいつも難しく書かれていて、読み終わっても結局「で、私はトクなの?損なの?」がわからないまま終わってしまいますよね。
ですから今日は、専門用語を並べる解説はやりません。
2026年度の改正であなたの家探しが、具体的にどう変わるのか。
その一点だけを、現場の目線で本音でお話しします。
先に結論からお伝えします。
今回の改正は、はっきりと「新築を追いかける人」より「立地の良い中古を選んでリノベする人」に有利な内容です。
国が「これからは中古住宅をもっと活用してほしい」という方向に、本気で舵を切りました。
私が日々ご相談を受ける中でも、これはここ数年で一番大きな転換点だと感じています。
1. まずは30秒で。住宅ローン控除って、そもそも何でしたっけ
要点3行サマリー
・年末のローン残高の0.7%が、原則13年間、税金から戻ってくる仕組み
・これまでは「新築に手厚く、中古に冷たい」設計だった
・今回の改正は、そのバランスを中古側にぐっと寄せてくる
家をローンで買うと、年末のローン残高の0.7%が、原則13年間、あなたが納めた所得税(引ききれない分は住民税)から戻ってきます。
これが住宅ローン控除、いわゆる「住宅ローン減税」です。
たとえば年末残高が3,000万円なら、その年は約21万円が戻ってくる計算になります。
これが数年続くわけですから、家計に効くのは言うまでもありません。
そして、ここが大事なところです。
この制度は長いあいだ、「新築に手厚く、中古に冷たい」設計でした。
今回の改正は、その不公平だったバランスを、中古側にぐっと寄せてくるものなんです。
なお、制度全体としては適用期限も5年延長され、令和8年1月から令和12年12月に入居した場合まで対象になります(参考:住宅:住宅ローン減税|国土交通省)。
2. 変わるポイントは、大きく3つだけ
要点3行サマリー
・中古の控除期間が10年から13年に延びる
・最大控除額が約210万円から約409.5万円へ、ほぼ倍増
・面積要件が50㎡から40㎡以上に緩和される
難しく考える必要はありません。
押さえるべき変更点は、たったの3つです。
① 中古の控除期間が「10年 → 13年」に延びる
これまで中古住宅(省エネ基準に適合するもの)の控除期間は10年でした。
それが新築と同じ13年に延びます。
単純に、恩恵を受けられる期間が3年分まるごと増えるということです。
② 最大控除額が「約210万円 → 約409.5万円」に
正直、ここが一番のインパクトです。
これまで中古の借入限度額は3,000万円で、最大控除額はおよそ210万円でした。
改正後は、省エネ性能の高い中古住宅なら借入限度額4,500万円まで引き上げられ、最大控除額は約409.5万円まで届きます。
ざっくり言えば、戻ってくる金額の上限が、ほぼ倍になったということです。
③ 面積要件が「50㎡以上 → 40㎡以上」に緩和
これまで中古は床面積50㎡以上が条件でした。
それが40㎡以上まで対象拡大です。
コンパクトな中古マンションを見ていた単身の方やご夫婦にとって、いきなり選択肢が広がります。
ただし、この40㎡への緩和には所得等の要件があり、合計所得金額が1,000万円を超える方や、子育て世帯などの上乗せ措置を使う方は、従来どおり50㎡以上が条件です。
ここは後で「影の部分」としてもう一度触れます。
なお、子育て世帯・若者夫婦世帯への上乗せも継続され、こちらの最大控除額は273万円まで拡充されます(参考:報道発表資料:住宅ローン減税等の延長・拡充が閣議決定されました|国土交通省)。
3. 光の話はここまで。パンフレットが語らない「影」の部分
要点3行サマリー
・満額の恩恵を受けられるのは「省エネ性能を満たす中古」だけ
・金利は上昇局面。控除額と金利総額はセットで試算する
・「最大◯万円」はあなたの数字ではない。個別条件で変わる
私の仕事は、あなたに「今すぐ買いましょう」と背中を押すことではありません。
ですから、良い話とセットで、必ず注意点とリスクもお伝えします。
ここを飛ばす人が、数年後にいちばん後悔します。
影① 対象は「省エネ性能を満たす中古」だけです
どんな中古でも満額の恩恵を受けられるわけではありません。
省エネ基準への適合が大前提です。
築年数の古い物件だと、この基準を満たすために、リノベで断熱改修が必要になるケースも珍しくありません。
「安い中古を買えば自動的にトク」ではない――ここは絶対に誤解しないでください。
影② いま金利は、上がっています
2026年は日銀の利上げが続き、変動金利がじわじわ上がっている局面です。
控除で戻る金額が増えても、金利負担がそれを食いつぶせば、差し引きゼロ、下手をすればマイナスです。
「控除でいくら戻るか」と「金利で総額いくら払うか」は、必ずセットで試算する。
これは現場の鉄則です。
影③ 「最大◯◯万円」は、あなたの数字ではありません
今日お伝えした金額は、あくまで条件がそろった代表ケースです。
あなたの所得、世帯構成、物件の性能によって、実際の控除額は変わります。
ネット記事の「最大409.5万円」という見出しを、そのまま自分に当てはめないでください。
中古住宅の適用条件の細かい部分は、国税庁の解説でも整理されています(参考:No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合|国税庁)。
4. では、どう動くのが賢いのか
要点3行サマリー
・まず物件の「省エネ性能」を確認する
・「実質負担」で物件を横並び比較する
・感覚ではなく、数字で決める
「中古を買ってリノベ」の妙味が高まったのは、間違いなく事実です。
ですがそれは、あなたにとって良い物件が見つかったときの話であって、「制度が変わったから急いで買う」話では決してありません。
私がご相談を受けたときに、必ずお伝えしている姿勢を3つご紹介します。
姿勢① まず物件の「省エネ性能」を確認する
恩恵を最大化できるかどうかは、ほぼここで決まります。
内見に行く前に、まずこの一点を確認するクセをつけてください。
姿勢② 「実質負担」で横並び比較する
「購入価格+リノベ費用+金利総額」から「戻ってくる控除額」を引いた実質負担を、物件ごとに並べて比べます。
この一手間で、「なんとなくお得そう」が「はっきりトクか損か」に変わります。
姿勢③ 感覚ではなく、数字で決める
この試算、実はエクセル一枚のフォーマットさえ作っておけば、物件情報を差し替えるだけで何件でも横比較できます。
焦って一件目に飛びつくのではなく、数字で冷静に選ぶ。
これが後悔しない家選びの、いちばんの近道です。
まとめ:制度に振り回されるのではなく、制度を味方につける
最後に、もう一度だけお伝えさせてください。
2026年度の税制改正は、中古住宅を買う人にとって、明確な追い風です。
控除期間は13年に延び、最大控除額はおよそ倍、面積要件も緩みました。
「中古+リノベ」という選び方が、これまで以上に現実的な一手になっています。
ですが、その恩恵をフルに受けられるのは、省エネ性能を満たす物件を選び、金利上昇とセットで冷静に試算した人だけです。
「改正でおトクになったらしいから」――この程度の理由で動くのは、いまの市場では本当に危険です。
不動産というのは、購入ボタンを押すまでは、買い手であるあなたが圧倒的に有利なゲームです。
押した瞬間、主導権は物件側に移ります。
だからこそ、制度に振り回されるのではなく、制度を味方につけて、主役はあくまであなた自身であってほしい。
不動産職人としての見立てはシンプルです。
数字で冷静に比べて、それでもキャッシュフローと満足が残る一件を選ぶ。
それが、今回の追い風をいちばん活かせる買い方です。
物件ごとの実質負担の試算や、「この中古は控除対象になるの?」といった個別のご質問があれば、いつでもご相談ください。
あなたの10年後、20年後まで見据えて、いっしょに考えます。
参考:公的機関・公式団体の解説
本記事の内容は、以下の公的機関の解説と整合する形でまとめております。詳しくお知りになりたい方は、あわせてご覧ください。
- 住宅:住宅ローン減税|国土交通省
- 報道発表資料:住宅ローン減税等の延長・拡充が閣議決定されました|国土交通省
- No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
本記事は「令和8年度税制改正大綱」(令和7年12月19日 与党公表)および国土交通省・国税庁の公表資料に基づき、購入検討者向けにわかりやすく整理したものです。適用の可否や具体的な控除額は、所得・物件の性能・契約時期等により異なります。実際のお手続きの際は、税理士等の専門家および最新の公式情報を必ずご確認ください。


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