どうも不動産職人です。
「新築だからリスクが低そう」「利回りが高くて魅力的」――そんな理由で新築木造アパートを不動産投資のスタートに検討される方、ここ最近本当に多いんです。
弊社でも新築木造アパートの建築販売をしていますが、正直エリアは悪くなりつつあります。
新築木造投資は、「明確な出口戦略を持ち、リスク許容度のある投資家」であれば、いまでも有力な選択肢の一つですが、本当にその物件に将来の出口はあるのでしょうか。
現在供給されている新築物件の多くは、当初から礼金はとれず、広告料2か月以上払っているのが実情です。
現場で客付けと管理を続けてきた立場から正直に申し上げると、ここ数年の新築木造市場は、ひと昔前とは別物と言っていいくらい環境が変わっています。
「立地の悪化」と「広告料(AD)2ヶ月以上、敷礼ゼロ」――こうした現場のリアルを知らずに飛び込んでしまうと、10年後に身動きが取れなくなってしまうでしょう。
今日は不動産会社が教えてくれない「現場で起きている本当のこと」を、プロの目線でじっくりお話ししていきます。
1. まずは公平に。新築木造アパートの「3つの本当のメリット」
要点3行サマリー
・建築コストが安く、表面利回りを高く設定しやすい
・「新築プレミアム」の集客力はいまだに健在
・木造は耐用年数22年、7〜8年での売却なら次の買い手も融資を組みやすい
新築木造そのものを全否定する気は、私にはまったくありません。
実際、明確な強みがあり、物件選びを間違えなければ有効な不動産投資であることに間違いはありません。
① 建築コストを抑えられる
鉄筋コンクリート(RC)造に比べて、木造の建築単価は段違いに安く済みます。
同じ予算でも手が届きやすく、結果として表面利回りを高く設定できるのは大きな魅力です。
② 「新築プレミアム」の集客力は、いまだに健在
日本の賃貸市場で「新築」というブランドが持つ力は、本当に侮れません。
周辺相場より少し高めの家賃設定でも、最初の入居者は比較的スムーズに決まる――これは現場で何度も体感してきた事実です。
③ 出口(売却)で次の買い手が融資を組みやすい
木造の法定耐用年数は22年。
新築から7〜8年で売却するシナリオであれば、次の買い手の金融機関も融資審査を通しやすく、出口戦略が描きやすいのは大きなアドバンテージです。
ここまでは、販売会社のパンフレットにもよく書かれている「光」の部分。
問題はここから先、販売現場が決して語らない「影」の部分にあります。
2. 【現場の異変】最近の新築木造、立地がどんどん悪くなっていませんか?
要点3行サマリー
・土地価格・建築コスト高騰で、駅遠・不整形地の新築が急増中
・徒歩10分超は賃貸ポータルのフィルターで弾かれて存在しないのと同じ
・「敷礼ゼロ」「AD2ヶ月」は便利な道具ではなく、立地の弱さを覆い隠す劇薬
ここ数年、都市部を中心に土地価格と建築コストが上昇し続けています。
その結果、投資用アパートの現場ではある「歪み」が広がっているんです。
それが、「利回りの数字を合わせるためだけに、駅から遠い土地・いびつな形状の土地(不整形地)に無理やり建てられた新築物件」の急増です。
職業柄、毎月たくさんの新築物件の図面と立地を見るのですが、正直、首をかしげたくなる物件が本当に増えました。
たとえば駅から徒歩15分以上の物件。
住宅地として悪くはありません。
ですが、入居者の多くは大手の賃貸ポータルサイトで部屋を探します。
「駅徒歩10分以内」でフィルターをかけられた瞬間、その物件はユーザーの検索結果に1件も表示されません。
ポータルで弾かれて内見ゼロ、なんてザラです。
検索結果に出ない物件は、存在していないのと同じ。
これが今の客付けの現実なんです。
「敷礼ゼロ」「AD2ヶ月〜」――これは便利な道具ではなく、劇薬です
立地の弱さをカバーするために、現場で常態化している手法が2つあります。
- 広告料(AD)2ヶ月以上:仲介会社の営業マンに「うちを決めてくれたら通常の倍のボーナスをお渡しします」とインセンティブを支払って客付けしてもらう手法
- 敷金・礼金ゼロ(ゼロゼロ物件):入居時の初期費用を極限まで削って、なんとか入居者を引っ張ってくる手法
「それで満室になるなら、別に問題ないんじゃない?」――そう感じられるかもしれません。
ですが、ここにオーナー様の手残りをじわじわと削っていく罠が仕込まれているんです。
3. 「新築なのにAD2ヶ月」――この時点で、すでに勝負はついています
要点3行サマリー
・「新築×AD2ヶ月×敷礼ゼロ」は周辺需要に競り負けている証拠
・新築のうちは販売会社がコストを裏で吸収しているだけ
・数年後、家賃下落と募集経費の急増として必ずオーナーに返ってくる
ここは特に大事なところなので、しっかりお伝えします。
一番強い集客カードである「新築」を切ってもなお、ADを2ヶ月以上積み上げ、敷礼ゼロにしないと埋まらない物件。
これは、周辺の賃貸需要に対して完全に競り負けている証拠です。
新築のうちは、こうしたコストの一部を販売会社側が裏で吸収してくれているため、オーナー様はまだ実感がわきません。
ですが、この現実は数年後、必ずオーナー様ご自身に返ってきます。
リスク① 5年後・10年後の「家賃下落」と「経費増」
最初の入居者が退去した瞬間、その物件は「ただの築浅中古」になります。
新築プレミアムはもう剥がれています。
駅から遠い築浅中古アパートを満室にしようとすれば、現場で取れる選択肢は事実上2つしかありません。
- ADを3ヶ月・4ヶ月まで積み増す
- 家賃を相場までしっかり下げる
どちらを選んでも、オーナー様の手残りは確実に削られていきます。
リスク② 表面利回りは、紙の上だけの数字に終わります
販売会社が提示する利回りは、満室・想定家賃で美しく整えられた数字です。
現場では、入居者が一人入れ替わるたびに、こういったコストが容赦なく出ていきます。
- 広告料(AD):客付け時に仲介会社へ支払うインセンティブ。立地が弱い物件では家賃の2ヶ月分以上を求められるケースも多い
- 客付時の仲介手数料:宅建業法上、貸主・借主合算で家賃1ヶ月分(+税)が上限。これは「成約のたび」に発生する一時費用です
- 月額の管理委託料:管理会社へ毎月支払う運用フィーで、一般に家賃の3〜5%程度が相場。上記の仲介手数料・ADとは別物なので混同しないように
- 原状回復費:敷金を預かっていないゼロゼロ物件では、ほぼオーナー様の完全持ち出しになります
仮に2年に1回のサイクルで入居者が入れ替わると、年間家賃収入の10〜15%程度が「募集コスト」だけで消えていく計算になります。
ここに金利・固都税・修繕費・月額管理料が乗ってくるわけですから、キャッシュフローはあっという間に細くなってしまうんです。
4. それでも新築木造で勝つために――守っていただきたい「3つの基準」
要点3行サマリー
・エリアは主要駅徒歩10分以内を死守
・木造の弱点(遮音性)を踏まえ、単身者向け1K〜1LDKに絞る
・出口は「長期譲渡所得に切り替わった後」を購入前に設計しておく
ここまで読んで、「やっぱり新築木造はやめたほうがいいのか」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、最初に申し上げた通り、基準をきちんと持って選べば、新築木造は今でも十分戦える商品です。
私が、ご相談を受けたときに必ずお伝えしている3つの基準をご紹介します。
なお、物件を選ぶときは「自分が儲かるかどうか」だけでなく、入居者にとって長く住みたいと思える物件か、そして地域の賃貸需要にプラスに作用する物件かという視点も、ぜひ持っていただきたいんです。
長く住みたいと思える物件は退去サイクルが伸び、結果としてオーナー様の募集コストも下がります。
地域に歓迎される物件は近隣からのクレームも少なく、長期的な資産価値も保たれやすい。
「オーナー・入居者・地域」の三方よしを設計できる物件こそ、20年スパンで勝ち残ります。
基準① エリアは「主要駅 徒歩10分以内」を死守する
建物の価値はいずれゼロに近づきます。
最後に残るのは土地の価値と、そのエリアの賃貸需要です。
「建物が古くなっても、駅近だから次の入居者は必ず付く」――この安心感が、長期保有でも短期売却でも、オーナー様を守ってくれます。
基準② 単身者向け(1K〜1LDK)の間取りに絞る
木造の最大の弱点は、やはり「遮音性」です。
ファミリー層は隣戸の生活音・上下の足音にどうしても敏感になりがちですので、土俵を間違えるとクレームと退去が止まらなくなります。
立地と初期費用を重視する単身者をメインターゲットに据えるのが、現場経験から見ても圧倒的に堅実です。
基準③ 「長期譲渡所得への切り替わり後」を、購入前から出口に設計しておく
新築木造は、減価償却が早く進む構造です。
ここで多くの方が勘違いしているのが、長期譲渡所得の判定基準です。
長期譲渡所得は「保有5年超」で判定されるのではなく、「譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること」が条件です。
つまり、単純に5年と1日保有しただけでは長期にはなりません。
実務上は、購入から約5年1ヶ月〜6年以上保有しないと長期譲渡に切り替わらないケースが多いと覚えておいてください。
ここを誤って「ちょうど5年で売れば税率が下がる」と信じ込んだまま売却に動くと、想定外の譲渡所得税で利益を大きく削られます。
ですから出口のターゲットゾーンは、長期譲渡に切り替わった後の「おおむね6〜8年保有後」に設定するのが王道です。
それと、これは現場で本当によく見る話なのですが――7年で売るつもりが、決断が遅れて15年・20年と握ってしまう例を、私自身いくつも見てきました。
築20年を超えると、次の買い手が金融機関から融資を引きづらくなり、売却価格を大きく下げざるを得なくなります。
出口の図面は、購入前に引いておくものなんです。
まとめ:購入ボタンを押すまでは、投資家のあなたが圧倒的に有利です
要点3行サマリー
・「融資が引きやすいから」程度の理由で買うのは危険
・武器は「徹底的な分析」と「見送る勇気」の2つだけ
・購入前に出口・募集経費・家賃下落を保守的に織り込むこと
最後に、もう一度だけお伝えさせてください。
「融資が引きやすいから」「新築だから安心だから」――この程度の理由で投資をスタートするのは、現在の市場では本当に危険です。
「立地の悪化」と「広告料の高騰」というダブルパンチが進行中の今だからこそ、私たち投資家側が持つべき武器は、たった2つに集約されます。
ひとつは、徹底的な投資分析。
もうひとつは、基準を満たさない物件を「今回は見送る」と判断できる勇気です。
実務に落とすと、こうなります。
- 業者の満室想定ではなく、周辺の中古相場家賃で計算し直す
- 「2年に1回、家賃3ヶ月分の募集経費」をあらかじめ織り込んでシミュレーションする
- 10年後の出口価格は、販売員の提示する数字から2割ほど引いて保守的に見積もる
これらを全部やってもなお、しっかりとキャッシュフローが残る物件。
それが、本当に投資すべき「勝てる新築木造」です。
不動産投資というのは、購入ボタンを押すまでは投資家側が圧倒的に有利なゲームです。
そして押した瞬間、主導権は物件側に移ります。
ですから、分析の結果、少しでも違和感があったり、基準に満たないと感じたりしたなら――「今回は見送る」という決断こそが、最大の防御であり、長く勝ち続けるための最短ルートです。
不動産職人の目
新築木造アパートは、「立地」「ターゲット」「出口」の3点を購入前に設計しきれる方にとって、いまも有効な投資商品です。
ですが、販売会社の言葉をそのまま信じて飛び込めるほど、ここ数年の市場はもう優しくありません。
販売側の「光」と、現場の「影」を両方知ったうえで、ご自身の基準で判断していただきたいと思います。


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