不動産売却の囲い込みとは?見分け方と対策5つ

コラム

どうも不動産職人です。


要点3行サマリー

・「囲い込み」とは、仲介会社が両手取引欲しさに他社への物件紹介を故意に制限すること。 ・大手仲介33社の試算では両手取引比率が40%を超える会社が15社にのぼり、比率の高さが囲い込みリスクの目安になる。 ・2025年1月の宅建業法施行規則改正でレインズの登録証明書交付が義務化され、規制が強化された。


「良い物件がなかなか見つからない」その裏側にあるもの

「SUUMOやアットホームで探しても、条件のいい物件が全然出てこない」

そんな声を、オーナー様や購入検討中の方からよく伺います。

実は、この背景には「囲い込み」という不動産業界特有の商習慣が隠れていることがあります。

先日も、実家を相続されたオーナー様からこんなご相談がありました。

「専任媒介で1社に依頼したが、3か月経っても反響がまったくない」

レインズの取引状況を確認してみると、実際には複数の問い合わせが入っていたにもかかわらず、担当者から共有されていなかったことが判明しました。

これが典型的な「囲い込み」です。

今回は、囲い込みの仕組みと見分け方、そしてオーナーが取るべき対策を整理してお伝えします。


囲い込みとは何か

囲い込みとは、売主から売却の仲介を依頼された不動産会社が、自社で買主も見つけて仲介手数料を売主・買主の両方から得る「両手取引」を狙い、他の不動産会社からの紹介や問い合わせを意図的に制限する行為です。

項目 内容
行為の内容 レインズへの登録を怠る、図面を登録しない、他社からの照会に「商談中」と偽って断る等
目的 自社のみで両手取引を成立させ、仲介手数料を両方から得るため
対象になりやすい契約 専任媒介契約・専属専任媒介契約(1社にしか依頼できない契約)
主な被害者 売主(オーナー)
法的位置づけ 宅地建物取引業法における指示処分の対象行為

オーナーが確認すべきチェックリスト

チェック項目 確認方法
レインズへの登録有無 登録証明書のID・パスワードで確認
取引状況(ステータス)の正確性 レインズ上の表示と担当者の説明を照合
図面の登録有無 レインズの登録画面で「図面:有」になっているか確認
広告転載区分 「不可」になっていないか確認
問い合わせ件数の共有 定期報告書やレポートで確認
契約形態 媒介契約書で専任・一般を確認

大手不動産仲介会社の両手取引比率に注目

囲い込みが起きやすいかどうかを事前に見極める目安として、「両手取引比率」があります。

両手取引とは、1社が売り手と買い手の双方から仲介手数料を得る取引のこと自体は違法ではありませんが、比率が高い会社ほど囲い込みのインセンティブが強く働きやすいとされています。

2024年度通期の売買仲介実績をもとに試算されたデータでは、大手・中堅33社のうち15社が両手取引比率40%超という結果が出ています(ダイヤモンド不動産研究所調べ)。

企業名 両手取引比率(参考)
三菱地所グループ 4.45%
野村不動産ソリューションズ 21.97%
東急リバブル 32.61%
三井不動産リアルティグループ 38.42%
センチュリー21 46.67%
住友不動産ステップ 50.90%

※数値は2024年度通期実績をもとにした試算値であり、時期により変動します。査定を依頼する際の一つの参考情報としてご活用ください。

比率が極端に高い会社に売却を依頼する場合は、後述する「巧みな手口」が使われていないか、より注意深く取引状況を確認することをおすすめします。


不動産会社が行う、巧みな囲い込みの手口3つ

囲い込みの手口は年々巧妙になっていると言われています。代表的な3つを押さえておきましょう。

1. あえて一般媒介にしてレインズ登録義務を外す

レインズへの登録義務があるのは専任媒介・専属専任媒介のみで、一般媒介には登録義務がありません。売主が不動産取引に不慣れだと分かると、根拠を示さずに一般媒介を勧め、レインズでの状況確認をできなくするケースがあります。理由のはっきりしない一般媒介の提案には注意しましょう。

2. レインズに図面を登録しない、他社に渡さない

レインズの文字情報だけではマンション名や階数、土地の丁目までしか分からず、間取り図や写真がなければ物件の魅力が伝わりません。図面を登録しない、あるいは「作成中」と偽って他社に渡さないことで、他社からの反響そのものを減らす手口です。

3. 内覧希望の問い合わせを理由をつけて断る

「売り手が海外出張中」「リフォーム中で来月以降」など、事実と異なる理由で他社からの内覧希望を断るという、最も古典的な手口です。レインズで取引状況が公開されるようになった今も、形を変えて残っています。

いずれも売主側からは気づきにくいため、担当者まかせにせず、定期的に状況を確認する姿勢が重要です。


なぜ今、囲い込みが注目されているのか

囲い込みが社会問題化したのは2015年ごろのことで、国土交通省は2016年にレインズの制度を改め、売主自身が自分の物件の登録状況を確認できる仕組みを整えました。

そして2025年1月1日、宅地建物取引業法施行規則の改正がさらに施行されました。

これにより、レインズに登録した物件の「取引状況(ステータス)」を実態と異なる形で表示していた業者は、宅地建物取引業法第65条に基づく指示処分の対象となりました。

例えば「売主都合で一時紹介停止中」と偽って他社の案内を断るような行為も、処分の対象に含まれます。

あわせて、専任媒介契約を結んだ際には、指定流通機構(レインズ)への登録を証明する「登録証明書」を売主に交付することが求められています。

これまで「見えなかった」囲い込みが、制度の後押しによって「見える化」されつつあるのが2025年以降の大きな変化です。


専任媒介・一般媒介のメリットとデメリット

囲い込みのリスクを踏まえたうえで、媒介契約の種類ごとの特徴を整理します。

契約形態 メリット デメリット(囲い込みリスク)
専属専任媒介 担当者が手厚く動きやすい、レインズ登録が5営業日以内に義務 1社に依存するため囲い込みが起きると発見が遅れやすい
専任媒介 複数社への依頼より窓口が一本化され連絡がスムーズ 同上。ただし登録証明書の交付義務あり
一般媒介 複数社に同時依頼でき、囲い込みが構造的に起きにくい 各社の販売活動に温度差が出ることがある

売却を急がない、あるいは物件の市場性に自信がある場合は、あえて一般媒介で複数社に依頼し、比較しながら進める方法も有効です。


囲い込みをされたくない場合に依頼したい不動産会社の選び方

「そもそも囲い込みをしない会社に頼みたい」という場合は、依頼先を選ぶ段階でいくつか確認しておきたいポイントがあります。

1. 「片手仲介(エージェント制)」を明言しているか

自社で買主を探さず、売主専属で活動する「片手仲介」を方針として掲げている会社は、構造的に両手取引を狙う動機がないため、囲い込みが起きにくいとされています。

例えば、SREホールディングスグループの「SREリアルティ」は片手仲介(エージェント制)を採用し、自社で買主を探さず他の不動産会社に幅広くアプローチする方式を取っています。

また、不動産ベンチャーの「ミライアス」も片手仲介を原則とし、仮に自社で買主が見つかった場合は買主側の仲介手数料を無料にするなど、両手取引のインセンティブそのものを薄める仕組みを採っています(参考:両手仲介に気をつける | ミライアス)。

2. 両手取引比率を開示・説明してくれるか

査定を依頼する段階で「御社の両手取引比率はどのくらいですか」「囲い込みはしませんか」と直接尋ね、明確に回答してくれるかを確認しましょう。曖昧にはぐらかす場合は要注意です。

3. レインズへの登録・報告を書面で約束してくれるか

登録証明書の交付やレインズ上のステータス確認方法を、契約前にきちんと説明してくれる担当者・会社を選びましょう。

4. 一般媒介での依頼にも前向きか

一般媒介を提案した際に難色を示さず、複数社での競争を前提に販売活動を提案してくれる会社は、囲い込みへの依存度が低い傾向にあります。

大手・中堅・不動産テック系のいずれであっても、上記の視点で比較検討することが、囲い込みを避けるための現実的な第一歩になります。


実際にあった事例

失敗例

都内のマンションを相続したオーナー様が、大手仲介会社1社と専任媒介契約を締結。

3か月間まったく問い合わせがないと聞かされていましたが、レインズの取引状況を別の不動産会社に確認してもらったところ、複数の反響があったにもかかわらず共有されていなかったことが発覚しました。

契約満了後に一般媒介へ切り替えたところ、1か月以内に希望価格に近い金額で成約しました。

成功例

一方、査定の段階から複数社に一般媒介で依頼し、各社の販売状況をこまめに比較していたオーナー様は、当初の想定より高い価格での成約に成功しています。

複数の会社の動きを見比べることで、囲い込みが起きにくい環境を自然と作れていたことがポイントです。


管理会社・仲介会社への相談をおすすめする理由

囲い込みは、オーナー自身がレインズを直接閲覧できない以上、気づきにくいのが実情です。

だからこそ、日頃から物件を管理している管理会社や、売却を専門とする仲介会社に相談し、取引状況を定期的に確認してもらうことが有効な対策になります。

「専任媒介で任せているが、本当に活動してもらえているか不安」

「実家じまいで売却を考えているが、何から手をつければいいかわからない」

こうしたお悩みがあれば、査定額の根拠や販売活動の状況、両手取引比率の傾向も含めて、遠慮なくご相談ください。

複数社の査定を比較しながら進めることで、納得感のある売却につながります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 囲い込みをされているかどうか、自分で確認する方法はありますか?

レインズへの登録証明書を確認し、記載されたIDとパスワードで自分の物件がどのように登録されているかを閲覧できます。図面が「有」になっているかも合わせて確認しましょう。

Q2. 専任媒介契約は解除できますか?

契約期間中でも、業者側に義務違反があれば解除できる場合があります。まずは契約書の内容と実際の対応状況を照らし合わせて確認しましょう。

Q3. 一般媒介にすれば囲い込みは絶対に起きませんか?

複数社に依頼するため構造的にリスクは下がりますが、各社の活動状況を自分でも把握しておくことが望ましいです。

Q4. 囲い込みをした業者にはどんな処分がありますか?

宅地建物取引業法第65条に基づく指示処分の対象となり、悪質な場合は業務停止処分に発展することもあります。

Q5. 2025年の規制改正で何が変わりましたか?

レインズの取引状況(ステータス)を実態と異なる形で登録・表示することが明確に処分対象となり、専任媒介契約時の登録証明書交付が求められるようになりました。

Q6. 実家を相続した場合、囲い込みのリスクは高いですか?

相続不動産は売却を急ぐケースが多く、専任媒介1社に任せきりになりやすいため、特に注意が必要です。

Q7. 査定額はどこまで比較すべきですか?

最低でも2〜3社の査定額と根拠を比較し、極端に高い査定を提示する業者には注意しましょう。

Q8. 囲い込みは違法行為ですか?

それ自体を直接罰する規定より、取引状況の虚偽表示など個別行為が宅建業法上の指示処分対象になります。

Q9. 媒介契約書のどこを見ればリスクが分かりますか?

媒介契約の種類(専属専任・専任・一般)と、レインズ登録義務の記載を確認しましょう。

Q10. 登録証明書はいつもらえますか?

専任媒介・専属専任媒介契約を締結した際、業者から交付されます。届いていない場合は請求できます。

Q11. 地方の物件でも囲い込みは起きますか?

都市部に多い傾向はありますが、地方でも専任媒介契約では同様のリスクがあります。

Q12. 管理会社に売却も相談してよいのですか?

管理と売却を分けて考える必要はなく、物件状況を把握している管理会社に相談することで、査定の精度や販売活動の透明性を確認しやすくなります。

Q13. 両手取引比率が高い会社には売却を依頼しない方がいいですか?

比率が高いこと自体が違法というわけではありませんが、囲い込みのインセンティブが働きやすい傾向はあります。依頼前に取引状況の開示姿勢を確認しておくと安心です。


まとめ

囲い込みは、売主が気づきにくい形で不利益をもたらす商習慣です。

大手仲介会社でも両手取引比率には大きな差があり、比率の高さは囲い込みリスクを見極める一つの目安になります。

2025年1月の宅建業法施行規則改正により、レインズの取引状況の透明化と登録証明書の交付が義務化され、以前より「見える化」が進みました。

とはいえ、制度だけに頼らず、オーナー自身が取引状況や図面登録の有無を確認したり、複数社の査定を比較したりする姿勢が引き続き重要です。

売却や実家じまいでお悩みの際は、査定の根拠や販売活動の状況まであわせてご相談ください。


参考:公的機関・専門機関リンク

※両手取引比率データの出典:ダイヤモンド不動産研究所「大手不動産仲介は『囲い込み』が蔓延?!」(2024年度通期実績をもとにした試算)

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