株のPBR1倍割れ、不動産で言うと?
要点3行サマリー
・株のPBR1倍割れ=「会社の解散価値より安く放置されている割安株」のこと。
・不動産で同じ発想をすると、指標は「積算価格」になる。
・売出価格が積算価格を下回る物件=不動産版PBR1倍割れ、と整理できる。
どうも、不動産職人です。
最近、株式投資で儲かったお客様が不動産に入ってこられるケースが増えており、勝てる不動産投資を上手く説明できないかと考えていたところ、株でいうPBRを使えば理解しやすいかなと思い、今回の記事を書いています。
株の世界で言う「PBR1倍割れ」というのは、ざっくり言えば「会社を今すぐ解散して資産をバラ売りした方が、株価より高い値がつく」という、いわゆるバリュー株のことですね。
理論上、株価が会社の解散価値を下回っているわけですから、放置されているなら割安、というロジックです。
ではこの考え方を、そのまま不動産に持ち込むとどうなるか。
ここで出てくるキーワードが、本日のテーマである「積算価格」です。
不動産の「お財布の中身」=積算価格とは
要点3行サマリー
・積算価格=土地値+建物の残存価値、で出される不動産の「中身」の値段。
・銀行も融資審査でこの積算評価を重視している。
・売出価格と積算価格を比べることで、その物件が「割安か割高か」が見える。
積算価格というのは、ざっくり言うと「土地値+建物の残存価値」です。
土地は、相続税路線価や公示価格などをベースに値段をつけます。
建物は、構造ごとの再調達価格(木造なら㎡15万円前後、RCなら20万円前後など)から、経過年数分を差し引いて残存価値を出します。
例えば土地が500万円、建物の残存価値が0円なら、その物件の積算価格は500万円、ということになります。
この積算価格、実は金融機関の融資審査でも重視される指標でして、「物件価格に対して積算がいくら出るか」で借りられる金額が変わってくることも珍しくありません。
つまり、株で言う「会社の解散価値(BPS)」のポジションに非常に近い指標、と考えていただいて差し支えありません。
不動産版PBR1倍割れ=「積算価格割れ物件」
要点3行サマリー
・売出価格 < 積算価格 となっている物件が、不動産版PBR1倍割れ。
・地方の古家には、このゾーンの物件が一定数存在する。
・株のバリュー株より、不動産の方が「自分でテコ入れできる」分、優位性がある。
ここまでくると、もうお気づきかと思います。
売出価格が積算価格を下回っている物件=不動産版PBR1倍割れ=積算価格割れ物件、ということです。
具体例で見てみましょう。
- 土地値:500万円
- 建物残存価値:0円
- 積算価格:500万円
- 売出価格:350万円
この場合、不動産版PBRは「350÷500=0.7倍」となります。
株なら誰もが目を皿のようにして探すゾーンですが、不動産の世界ではこういう物件、地方の古家を中心に意外なほど転がっているのが現実です。
なぜ放置されているかと言えば、
- 建物が古くて住むのに修繕が必要
- 地方なので一般の実需層からの引き合いが弱い
- 売主側が「早く現金化したい」事情を抱えている
といった、市場参加者の少なさが背景にあるケースが多いですね。
これは株のバリュー株が「不人気・地味・小型」な理由で放置されているのと、構図としてはほぼ同じです。
バリュー投資の「不動産版」勝ちパターン
要点3行サマリー
・土地値近辺で築古アパートを仕入れ、空室を一戸ずつ直して満室稼働で利回り10〜15%超を狙う型。
・同じ土地値割れでも「できるだけ都市部寄り」が好ましい。地方の安さは土地値の薄さと表裏一体。
・株との最大の違いは「自分でテコ入れできる」というコントロール権の存在。
不動産バリュー投資の勝ちパターンを、現場目線で整理しておきます。
- 土地値、もしくは土地値を割る価格で、できるだけ都市部に近いエリアの築古アパート(木造一棟)を仕入れる
- 1戸あたり30〜50万円を目安に、空室ごとに最小限の原状回復・リフォームを入れて貸せる状態に戻していく
- 各室を相場家賃で賃貸付けし、満室稼働で表面利回り10〜15%超を狙う
このやり方は、再現性という意味でも実現しやすい投資です。
築古アパート(木造4〜8戸クラス)は、エリア次第で一棟あたり1,000万〜2,000万円台のレンジで売りに出ているケースも多く、戸建てよりは敷居が高くなる代わりに、戸数があるぶん空室が出てもキャッシュフローがゼロになりにくいのが特徴です。
エリア選定で意識していただきたいこと——地方の「安さ」には落とし穴があります
ここはどうしてもお伝えしておきたい現場の話です。
ご予算の都合上、どうしても地方エリアを中心に探すことになる方は多いと思います。
ただ、職人として一言申し上げますと、「安く買える」のと「バリューアップしやすい」はまったく別の話です。
地方の築古アパートは、確かに購入価格は安く見えます。
ですが、安い理由はシンプルで、そのエリアの土地値そのものが薄いからです。
土地値が薄いということは、現場では次のような形でじわじわ効いてきます。
- リフォームで建物価値を上げても、土地値が引き上がってこないので資産価値が伸びにくい
- 出口で売却するときの「下値の守り」が、想定より弱い
- 銀行評価(積算)が伸びにくく、2棟目・3棟目の融資に繋がりにくい
- そもそも地方のエリアでは賃貸需要も薄く、客付けでもADを積む羽目になる
つまり、バリュー投資の前提である「土地で守る」が効きにくいのです。
ですから、ご予算が許す範囲で結構ですので、できるだけ都市部に近いエリア、もしくはターミナル駅にアクセスが取れる中核市の周辺を優先的に見ていただくのが、長く勝てる選び方だと、私は現場で感じています。
「地方で安く一棟」よりも、「都市部寄りで一棟、少し背伸びしてでも土地値の厚いエリア」。
買い増しを見据えて「2棟目・3棟目をどう積むか」という発想で入っていける、初心者から中級者にステップアップする際の相性が良い領域だと、私は現場で見ています。
土地値重視という考え方そのものは、YouTubeなどでご自身でも実績を公表されている著名な発信者(いわゆる「不動産アニキ」こと小林大祐氏など)も含めて、不動産投資の王道として広く語られているロジックです。
ここで誤解していただきたくないのですが、「誰かと同じやり方をしているから正解」という話ではありません。
土地値以下で仕入れるという発想は、あくまで「下値リスクを土地で守る」という、極めて保守的なバリュー投資の考え方の一つであり、同じロジックを採用している投資家が一定数いる、という実例の一つに過ぎないとご理解ください。
そしてここからが、株との一番大きな違いです。
株のバリュー投資の場合、割安だと気づいても、株価が訂正されるかどうかは経営陣の動きや市場の気分次第です。
下手をすれば、何年も「割安なまま放置」されることもあります。
ところが不動産は違います。
自分の判断で、自分のタイミングで、価値是正のアクションが打てるのです。
リフォームして貸す、用途を変える、賃料を見直す、いずれは売却して出口を取る——全部、自分の意思で動かせます。
この「コントロール権」こそが、不動産バリュー投資の最大の優位性だと、私は現場で痛感しています。
ただし、注意点もきちんと押さえてください
要点3行サマリー
・積算が出ている=必ず儲かる、ではない。需要のないエリアは要注意。
・再建築不可・接道不良・心理的瑕疵などの落とし穴も多い。
・「自分で動ける範囲か」を冷静に見極めるのが、長く続けるコツ。
ここまで読んでいただいて、「よし、地方の築古アパートを片っ端から見てみよう」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、職人として一言申し上げておきます。
積算価格割れ=必ず儲かる物件、ではありません。
現場で見ていて、よく引っかかるポイントを挙げておきます。
- そもそも賃貸需要のないエリアで、貸しても埋まらない
- 再建築不可で、出口(売却)が極端に弱い
- 接道がギリギリで、リフォーム・解体コストが想定の倍になる
- 心理的瑕疵や近隣トラブルなど、現地に行かないと分からない要因がある
積算上は割安に見えても、こうした要素が一つでも刺さると、利回りシミュレーションは絵に描いた餅になります。
だからこそ、「自分の足で現地を見られる範囲か」「自分でリフォーム・客付けの判断ができる範囲か」という、ご自身の運用キャパとセットで考えていただきたいのです。
これは煽る話でも夢のある話でもなく、長く続けていただくための地味な現実論です。
不動産職人としての見立て
要点3行サマリー
・積算価格割れの考え方は、初心者ほど身につけてほしい守りの軸。
・派手な利回りより「下値が守られているか」をまず見る癖を。
・気になる物件は、信頼のおける営業マンやコンサルタントに物件診断を依頼するのが安全。
最後に、不動産職人としての見立てをお伝えします。
積算価格割れという発想は、派手な利回りを狙う「攻め」のためではなく、まず下値を守るための「守り」の軸として、初心者の方ほど早めに身につけていただきたい考え方です。
「この物件、積算でいくら出ますか?」
「土地値ベースで見ると、売出価格に対してどれくらい割安ですか?」
このたった二つの問いを習慣化するだけで、無理筋の高値づかみは大幅に減らせます。
もちろん、エリア選定・出口戦略・運用体制まで含めると、机上の数字だけでは判断しきれない部分が多いのも事実です。
気になる物件があれば、買う前に一度、信頼のおける不動産営業マンやコンサルタントに物件診断を依頼しましょう。
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