2020年の民法改正で賃貸経営はどう変わる?敷金の返還義務について明文化

民法改正

どうも不動産職人です。

もう2019年も残り少なくなってきましたね。

毎日アクセク働いていると一年はあっという間ですが、何か爪痕を残していきたいと思いつつ、日々忙しいと逃げてしまう自分に反省の日々です。

年が明けるといよいよ来年2020年4月から民法が改正されます。

民法改正で不動・賃貸経営に関係するのではというのをご紹介していきたいと思います。

大きくは、敷金返還の義務化、原状回復の義務範囲、連帯保証人の保護、一部滅失等による賃料減額の4つが関係するのかなと思います。

今回は敷金返還の義務の明文化についてお話したいと思います。

敷金と礼金

敷金返還の義務化のお話をする前に、敷金とは何かについて知っておく必要があります。

最近は敷金を取るオーナーさんも減ってきましたが、賃貸で部屋を借りる条件には、敷金と礼金、そして家賃が物件情報に記載されています。

敷金と礼金の歴史について少しお話したいと思います。

敷金と礼金の歴史

敷金と礼金を取る習慣は一緒に始まったわけではなく、それぞれ諸説ありますがその中から有力と言われている説をご紹介します。

礼金の歴史

礼金は、契約時に払ったら返ってこないお金。

礼金というだけに大家さんに対して契約してくれてありがとうといったお礼を込めたお金の意味合いが強いです。

実際には大家さんは家賃とこの礼金を使って設備の故障などに対応しています。

最近では敷金は無しにして礼金のみ、礼金もなしという物件も多いです。

礼金が始まったのは、関東大震災後という説があります。当時は家屋の倒壊や火災などで多くの人が家を失い、貸家を探す人で溢れました。その時に優先的に貸家を提供してくれた大家さんへのお礼を込めて渡したのが始まりと言われています。
他にも、高度成長期の時代には、都会へ単身上京する学生が多く、下宿を利用していました。その下宿の大家さんに対して親が「子供を宜しくお願いします」という意味を込めて送ったお礼のお金が礼金のはじまりという説もあります。

敷金の歴史

敷金は、これまでは万が一家賃の滞納や退去時の原状回復費用に充てられたお金。

敷金の返還についてはトラブルが多く、原状回復費用の額に関係なく、敷金を返さない強欲大家と敷金で揉めるというのが本当に多かったです。

敷金の歴史は、礼金より古く江戸時代と言われています。江戸時代には、結婚する際に妻の家族が妻を送り出す際に持参金を持たせていました。このお金を敷金(しききん・しきがね)と呼んでいたようです。
離婚の際は、夫は受け取っていた敷金を返還する義務があり、今の敷金はこの習慣がルーツになっていると言われています。

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敷金の返還義務を明文化へ

敷金の返還には、大家さんが退去時に原状回復費用が予想以上に掛かるなど、色々と理由をつけて減額したり、変換しないということが多く、私も賃貸仲介しているとき、自主管理のオーナーと入居者の間に入って大変だった経験があります。

これまで敷金に関する条文はありましたが、敷金の意味やルールは慣行を踏まえた判例によって決めらていました。今回の民法改正ではそれが明文化されるというのが大きなニュースとなったわけです。

まだ、自主管理大家さんの中には、ご理解されていない方もいらっしゃいますので、これを機に理解を深めていただければと思います。

敷金の3つのポイント

敷金のポイントは下記の3つ。

1.返還義務の発生時期…明け渡し時説
2.担保の範囲…担保範囲非限定説
3.明け渡しとの先後関係…先履行説
判例では、1.敷金の返還義務は、賃貸借の終了ではなく、明渡し後、2.敷金の担保の範囲は、賃貸借中だけでなく、明渡しまでの債務を含む、3.明け渡しが敷金の返還よりも先という取扱いが定着していました。

敷金について明文化

「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」の38-7では、1)敷金は賃料債務その他の賃貸借契約の金銭的担保、(2)返還時期は賃貸借終了かつ明渡しが完了(3)賃貸人は債務不履行があった際は敷金をその債務に充当できるということが明文化されました。

これまで曖昧な取り扱いだった敷金というものが、これによってこれが敷金だよというのがはっきりすることになります。

7 敷金
(1) 敷金とは,いかなる名義をもってするかを問わず,賃料債務その他の賃貸
借契約に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で,
賃借人が賃貸人に対して交付する金銭をいうものとする。
(2) 敷金が交付されている場合において,賃貸借が終了し,かつ,賃貸人が賃
貸物の返還を受けたとき,又は賃借人が適法に賃借権を譲渡したときは,賃
貸人は,賃借人に対し,敷金の返還をしなければならないものとする。この
場合において,賃料債務その他の賃貸借契約に基づいて生じた賃借人の賃貸
人に対する金銭債務があるときは,敷金は,当該債務の弁済に充当されるも
のとする。
(3) 上記(2)第1文により敷金の返還債務が生ずる前においても,賃貸人は,賃
借人が賃料債務その他の賃貸借契約に基づいて生じた金銭債務の履行をしな
いときは,敷金を当該債務の弁済に充当することができるものとする。この
場合において,賃借人は,敷金を当該債務の弁済に充当することができない
ものとする。
(概要)
本文(1)は,敷金(民法第316条,第619条第2項参照)の意義を判例(大判大正1
5年7月12日民集5巻616頁等)や一般的な理解を踏まえて明確にするものである。
本文(2)は,敷金返還債務が生ずる時期を明確にするものである。判例(最判昭和48年
2月2日民集27巻1号80頁)は,賃貸借が終了し,かつ,目的物が返還された時に敷
金返還債務が生ずるとしている。また,賃借人が適法に賃借権を譲渡したときも,賃貸人
と旧賃借人との間に別段の合意がない限り,その時点で敷金返還債務が生ずると考えられ
る(最判昭和53年12月22日民集32巻9号1768頁参照)。そこで,本文(2)では,
これらの理解を明文化することとしている。
本文(3)は,敷金返還債務が本文(2)第1文により具体的に生ずる前における敷金の充当
に関する規律について定めるものであり,判例法理(大判昭和5年3月10民集9巻25
3頁)を明文化するものである。

参照;民法(債権関係)の改正に関する中間試案(概要付き)【PDF】

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賃貸経営への影響は

今回の民法改正では、現行法で直接規定がない敷金授受の法律関係を追加し、敷金の意義、敷金返還債務の発生要件、敷金の充当に関する規定が新設されます。

しかし、これまでの判例を元に具体的に明文化したというだけなので、賃貸経営においてはこれまで通りで特に影響はないと思います。管理会社の方々においても特に混乱はないでしょう。

一番問題になりやすい敷金返還時期についても、物件返還時であり、この点も現行法での裁判例・実務での取り扱いと変更はありません。

なので、今回の民法改正を気に敷金の取扱いについてもう一度チェックするというくらいでいいと思います。

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